仕入控除税額の計算の特例

1. 特定収入の意義等

特定収入とは、資産の譲渡等の対価以外の収入で、次に掲げるもの以外のものです(法60C、令75@)。

(1)借入金及び債券の発行に係る収入で、法令においてその返済又は償還のための補助金、負担金その他これらに類するものの交付を受けることが規定されているもの以外のもの(以下「借入金等」という。)
(2)出資金
(3)預金、貯金及び預り金
(4)貸付回収金
(5)返還金及び還付金
(6)次に掲げる収入
@ 法令又は交付要綱等において、次に掲げる支出以外の支出(特定支出)のためにのみ使用することとされている収入

 イ、 課税仕入れに係る支払対価の額に係る支出

 ロ、 課税貨物の引取価額に係る支出

 ハ、 借入金等の返還金又は償還金に係る支出

A 国又は地方公共団体が合理的な方法により資産の譲渡等の対価以外の収入の使途を明らかにした文書において、特定支出のためにのみ使用することとされている収入

なお、上記(6)の@にいう「交付要綱等」とは、国、地方公共団体又は特別の法律により設立された法人から資産の譲渡等の対価以外の収入を受ける際にこれらの者が作成したその収入の使途を定めた文書をいいます(令75@六)。

したがって、次の収入が特定収入に該当することとなります(基通16−2−1)。

(1)租税
(2)補助金
(3)交付金
(4)資産の譲渡等の対価に該当しない負担金
(5)資産の譲渡等の対価に該当しない他会計からの繰入金(公益法人等における特別会計から一般会計への繰入金は除く。)
(6)寄附金
(7)出資に対する配当金
(8)保険金
(9)損害賠償金
(10)資産の譲渡等の対価に該当しない会費等
(11)資産の譲渡等の対価に該当しない喜捨金等
(12)その他の資産の譲渡等の対価に該当しない収入
なお、前期繰越金は、当期の収入として経理上処理されている場合であっても、特定収入には該当しません。

2. 仕入控除税額の調整計算

これは、特定収入が5%を超える場合に、特定収入により賄われた課税仕入を仕入控除税額から除くために行う計算で、その具体的な調整計算の方法は、原則 的な方法により計算される仕入控除税額から特定収入に係る課税仕入れ等の税額を控除した後の金額を仕入控除税額とし、この場合に控除をして控除しきれない特定収入に係る課税仕入れ等の税額が生じたときは、その控除しきれない金額は、課税標準額に対する消費税額とみなして納付税額に加算することとなります(法60C、D)。

なお、仕入控除税額から控除すべき特定収入に係る課税仕入れ等の税額は、次により計算します(令75C)。

(1)その課税期間の課税売上割合が95%以上である場合

 次の@及びAの合計額が、特定収入に係る課税仕入れ等の税額となる。

 @ 課税仕入れ等に係る特定収入の額の4/105相当額
 A (課税仕入れ等の税額−@の金額)×調整割合

なお、課税仕入れ等の税額から@の金額を控除して控除しきれない場合には、@の金額から、その控除しきれない金額に調整割合を乗じて計算した金額を控除した金額が、特定収入に係る課税仕入れ等の税額となります。

イ、 「課税仕入れ等に係る特定収入」の意義
課税仕入れ等に係る特定収入とは、特定収入のうち、法令、交付要綱等又は国若しくは地方公共団体が合理的な方法により資産の譲渡等の対価以外の収入の使途を明らかにした文書(法令等)において課税仕入れに係る支払対価の額又は課税貨物の引取価額に係る支出のためにのみ使用することとされている部分をいう(令75C一イ)。
なお、特定収入の使途を特定する方法は、基通16−2−2によることとなっている。 また、「課税仕入れ等に係る特定収入」には、特定収入の全額が課税仕入れ等に係る支出のみに充てることとされているもののほか、特定収入のうちの一定金額が課税仕入れ等に係る支出に充てることとされている場合におけるその一定金額がこれに該当する(基通16−2−3)。
ロ、課税仕入れ等の税額」の意義 課税仕入れ等の税額とは、原則的な方法により計算した場合に控除されることとなる仕入れに係る消費税額(この調整措置を適用する前の仕入控除税額)をいう(令75C一ロ)。
ハ、「調整割合」の意義 その課税期間における資産の譲渡等の対価の額の合計額にその課税期間における課税仕入れ等に係る特定収入以外の特定収入の合計額を加算した金額のうちに、その課税仕入れ等に係る特定収入以外の特定収入の合計額の占める割合をいう(令75C一ロ)。

なお、調整割合の計算をする場合における資産の譲渡等の対価の額については、特定収入割合の計算をする場合における資産の譲渡等の対価の額と同様に、課税売上割合の計算の場合の資産の譲渡等の対価の額の計算における令第48条のような特例規定が設けられていないことに留意する。

(2)仕入控除税額を個別対応方式により計算する場合

 次の@からBの合計額が、特定収入に係る課税仕入れ等の税額となります。

@ その課税期間における特定収入のうち法令等において課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等に係る支払対価の額又は課税資産の譲渡等にのみ要する課税貨物の引取価額に係る支出のためにのみ使用することとされている部分の合計額の4/105相当額
A その課税期間における特定収入のうち法令等において課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等に係る支払対価の額又はその共通して要する課税貨物の引取価額に係る支出のためにのみ使用することとされている部分の合計額の4/105相当額に課税売上割合(課税売上割合に準ずる割合を含む。)を乗じて計算した金額
B その課税期間の課税仕入れ等の税額から@及びAの金額の合計額を控除した残額に、その課税期間の調整割合を乗じて計算した金額  なお、その課税期間の課税仕入れ等の税額から@及びAの金額の合計額を控除して控除しきれない場合には、@及びAの金額の合計額から、その控除しきれない金額にその課税期間の調整割合を乗じて計算した金額を控除した金額が、特定収入に係る課税仕入れ等の税額となります。
(3)仕入控除税額を一括比例配分方式により計算する場合

次の@及びAの合計額が、特定収入に係る課税仕入れ等の税額となります。

@ その課税期間における課税仕入れ等に係る特定収入の合計額の4/105相当額に課税売上割合を乗じて計算した金額
A その課税期間の課税仕入れ等の税額から@の金額を控除した残額に、その課税期間の調整割合を乗じて計算した金額

なお、その課税期間の課税仕入れ等の税額から@の金額を控除して控除しきれない場合には、@の金額から、その控除しきれない金額にその課税期間の調整割合を乗じて計算した金額を控除した金額が、特定収入に係る課税仕入れ等の税額となります。